アメリカ合衆国トランプ大統領のX(旧Twitter)からのメッセージは、ほぼ公式声明として扱われている状況は、日常的にSNSを活用する政治家・要人が増えたことの現れだと思います。今回は海外の要人が2018年現在どのようにSNSの活用しているかを確認し、併せて企業の代表となる方の「個人」が表に出る公式アカウント運用する際のヒントを見い出せればと思います。
ドイツ:メルケル首相 Facebook公式アカウント

>>参考: @AngelaMerkel
・2018/11/28時点(引退されてからアカウントを一部ユーザーにのみ公開するかたちをとっています。)
・フォロー:254万
・投稿状況:ほぼ毎日、1日1投稿
・エンゲージメント:各投稿に対する反応は2000以上、コメントは約70件
・コメントへの返信対応:なし
ドイツのSNS背景(2018年時点)
Facebookが圧倒的に活用されており、メルケル首相がFacebookで公式カウントを開設しているのは納得がいきます。
また、WhatsApp(Facebook傘下)の利用者が多く、連絡ツールとして日本のLINEのような位置づけとなっており、常に上位にランクされるSNSはFacebookに次いでWhatsAppがランキングされているようです。ビジネス用SNSとしてXINGが主流で、ドイツならではSNS利用状況が垣間見えます。
>>参考: SOCIAL MEDIA 2018: AKTUELLE NUTZERZAHLEN(29. Oktober 2018)
SNS運用状況
ドイツ首相メルケル氏は、国内で圧倒的な利用率を誇り、ヨーロッパ全体でも高いシェアを持つFacebook上に公式アカウントを開設していました。
アカウントでは、イギリスのEU離脱(Brexit)に関する情報や選挙活動の報告、AI研究の視察レポートなど、日々の政治活動に関する発信を行っており、自身のWebサイトへの誘導にもFacebookを活用していたようです。
その運用内容はまさに「政治活動の延長線上」といえるものですが、時には柔らかい一面を見せる投稿も。たとえば、2014年7月のサッカーワールドカップでドイツが優勝した際には、自他ともに認めるサッカー好きらしく、ドイツ代表チームとのオフショットを投稿。政治家としての顔だけでなく、人間味のある姿も印象的でした。
※参考:メルケル首相Facebookaアカウント、2014年7月14日投稿より
サッカードイツ代表と写真: 7.3万人「いいね」
メルケル首相とサッカーワールドカップ、ドイツ代表とのオフショット。

フランス:エマニュエル・マクロン大統領 X(旧Twitter)公式アカウント

>>参考: @EmmanuelMacron
・2018/11/28現在
・フォロー:41万人
・投稿状況:ほぼ毎日、一日3~7投稿
・エンゲージメント:いいね3000以上、リツイート700以上、コメント300以上
・コメントへの返信対応:なし
フランスのSNS背景(2018年時点)
フランスでは、他のヨーロッパ諸国と比較してYouTubeの利用率が常に高く、特に画像よりも「動画」に対する反応が非常に良いのが特徴です。クリエイティブ表現の場として、動画コンテンツが好まれる傾向がうかがえます。
また、前述のドイツと同様に、連絡手段としてのSNS利用も盛んで、WhatsAppは上位にランクインしています。チャットアプリとしての機能性が評価されているようです。
加えて、Snapchatの人気が高まりつつありました。投稿された画像や動画が数時間で自動的に消えるという一時性が、フランスらしい“クリエイティブな遊び心”や“表現の自由さ”にマッチして、多くのユーザーに支持されていたようです。
>>参考: Tiz -Agency in Strasbour Découvrez en image le nombre d’utilisateurs des réseaux sociaux en 2018 !
運用状況
若くして政党「アン・マルシュ! (日:前進!、仏:En Marche!)」を結成し、フランス大統領となったマクロン大統領は、X(旧Twitter)で公式アカウントで拡散に力を入れる様子です。
YouTubeやSnapChatの利用者が多いフランスでは、X(旧Twitter)でも動画を多く投稿する傾向があるようで、マクロン大統領公式アカウントからも、ライブ配信や動画も多く、テレビ以外でも質疑応答を視聴できるよう工夫をしている点もSNSのメインユーザー層へのアプローチと思われます。
>>参考: マクロン大統領 X(旧Twitter)公式アカウント、2018年11月11日投稿より
2018年11月11日第一次世界大戦終結から100周年を迎え、フランスのパリ市にて式典が行われた。

カナダ:ジャスティン・トルドー首相 X(旧Twitter)公式アカウント

>>参考: @JustinTrudeau
・2018/11/28現在
・フォロー:438万
・投稿状況:ほぼ毎日、1日5投稿
・エンゲージメント:いいね30~200、リツイート20~2000、リプライ10~200
・コメントへの返信対応:なし
カナダのSNS背景(2017年時点)
Facebook(Messengerを含む)のユーザー数はカナダでも圧倒的で、その存在感はアメリカと非常によく似ています。加えて、テレビよりもスマートフォンで動画を視聴する傾向が強まっており、YouTubeのユーザー数も上位にランクインしています。
X(旧Twitter)はFacebookほどのシェアはありませんが、私生活のちょっとした出来事を手軽に発信・拡散できる手段として、活用されている点は日本のSNS利用スタイルに近い印象です。
また、写真や動画で気軽にコミュニケーションがとれるInstagramや、アイデア収集に便利なPinterestが人気を集めている点も、アメリカと共通する傾向と言えるでしょう。
>>参考: Penetration of leading social networks in Canada as of the 3rd quarter of 2017
運用状況
注目すべき点として、カナダは公用語に英語とフランス語の両方を採用しているため、首相の公式アカウントでは同じ内容のツイートを2言語でそれぞれ投稿しています。そのため、投稿回数も自然と多くなり、運用にはかなり手間がかかっていることがうかがえます。
首相ジャスティン・トルドー氏は、政治家としての公式アカウント「@JustinTrudeau」を通じて、カナダ国内の事情に寄り添った投稿を展開していました。政治的メッセージの発信だけでなく、日常感のある投稿や、カナダで人気のスポーツ「カナディアン・フットボール・リーグ(CFL)」の優勝チームを祝福するリツイートなど、一般ユーザーとの距離を縮める工夫も見られました。
>>参考: トルドー首相 X(旧Twitter)公式アカウント、2018年11月21日投稿
インフルエンザ予防接種を受けている様子

シンガポール:リー・シェンロン首相 Facebook公式アカウント

>>参考: @leehsienloong
・2018/11/28現在
・フォロー:122万
・投稿状況:ほぼ毎日、1日5投稿
・エンゲージメント:いいね等平均500、シェア平均100以上、リプライ50~300
・コメントへの返信対応:なし
シンガポールのSNS背景
YouTubeでの動画視聴、Facebookの上位は欧米諸国と同様で、次にInstagramが続いているようです。 連絡ツールとしてはLINEが食い込むなど、東南アジアでのLINEの普及もうかがえます。SNSで情報発信・拡散というよりは、一般的には無料で連絡(電話機能)が取れるツールが重要視されているようです。
>>参考: Digital in 2018 in Southeast Asia Part 1 – North-West
運用状況
リー・シェンロン首相は、Facebook上で公式アカウントを運用しており、自身のWebサイトの更新情報やお知らせなどを投稿。SNSとWebサイトの両方を連携させた情報発信を行っていました。
投稿内容は主に政治活動が中心で、外交や国内イベントへの参加報告が多く、多民族国家であるシンガポールらしく、毎月さまざまな文化行事についての投稿が見られます。
特筆すべきは、そのアカウントがコメントへの返信など、SNS上で国民との直接的なやり取りは行っていないにもかかわらず、一般ユーザーから寄せられるコメントが非常に温かく、ポジティブなものである点です。これは、政治に対する国民の関心の高さや、リー首相への信頼・支持の厚さを感じさせるものとなっていました。
※参考: リー・シェンロン首相 Facebook公式アカウント、2018年11月3日投稿より
“Keep Singapore Clean” campaign”

ダライ・ラマ14世 X(旧Twitter)公式アカウント

>>参考: @DalaiLama
・2018/11/28現在
・フォロー:1883万
・投稿状況:3日1投稿
・エンゲージメント:いいね平均3万以上、リツイート平均2万以上、リプライ平均300以上
・コメントへの返信対応:なし
運用状況
ダライ・ラマ14世のX(旧Twitter)公式アカウントでは、約3日に1回の頻度で投稿が行われており、その運用スタイルは非常にシンプル。まるでbotのようにも見えるほど、淡々としたテキスト中心の投稿が続いています。
とはいえ、その投稿内容はダライ・ラマ14世らしく、平和や安らぎ、慈悲の心を説くメッセージが中心で、画像や動画の使用は最小限にとどめられています。ただし、時には画像付きの投稿も見られ、視覚的にもフォロワーの心に響く工夫がなされていました。
広告宣伝や、リプライなどによるユーザーとのコミュニケーションは行っていないものの、そのフォロワー数は1,000万人台と驚異的。1つの投稿に対して平均300件以上のリプライが寄せられており、ノーベル平和賞の受賞から約30年を経てもなお、その影響力は健在です。
>>参考: ダライ・ラマ14世 X(旧 Twitter)公式アカウント2018年7月6日投稿
83歳の誕生日にケーキカットしている画像付き投稿

マララ・ユスフザイさん X(旧Twitter)公式アカウント

>>参考: @Malala
・2018/11/28現在
・フォロー:140万
・投稿状況:週3~4投稿
・エンゲージメント:いいね平均200以上、リツイート平均50以上、リプライ平均10~300(※リプライは内容により変化がある)
・コメントへの返信対応:なし
運用状況
わずか15歳で女性の教育の権利を訴え、命の危険を冒しながらも声を上げ続けたパキスタン出身の人権活動家、マララ・ユスフザイさん。
彼女は、自らが“女性教育の象徴”として先頭に立ち、その活動内容をSNSで積極的に発信しています。自身の公式(旧Twitter)アカウントでは、スピーチや活動報告の投稿に加えて、同じ志を持つ活動家の投稿をリツイートするなど、情報の拡散にも力を入れている様子がうかがえます。
さらに、彼女が設立した教育支援団体「マララ・ファンド」も、Facebookと(旧Twitter)にそれぞれ専用アカウントを開設。マララさん個人のアカウントとは役割を分け、団体としての活動紹介やフォーラムの情報発信を行っています。
このように、SNSの特徴を活かした発信と分担運用により、活動の広がりと社会への影響力を効果的に高めている点が印象的です。
>>参考: マララ・ユスフザイさん X(旧 Twitter)公式アカウント2018年9月25日投稿
Youth2030: The United Nations Youth Strategyより

イギリス皇室 X(旧Twitter)公式アカウント

>>参考: @RoyalFamily
・2018/11/28現在
・フォロー:383万
・投稿状況:1日5~10投稿
・エンゲージメント:いいね平均100以上、リツイート平均50以上、リプライ平均10~200(※リプライは内容により変化がある)
・コメントへの返信対応:なし
運用状況
イギリス王室の公式SNSアカウントでは、近隣諸国への訪問、平和活動への参加、学生支援イベントなど、日々の公務に関する投稿がほぼ毎日行われており、その情報発信力は非常に高いものとなっていました。
投稿される写真は、広報用のフォーマルなものに加えて、カジュアルで自然な表情を捉えたショットも多く、SNSユーザーとの距離感を意識した運用が見て取れます。また、「今昔シリーズ」といった懐かしい写真の投稿など、遊び心のあるコンテンツもあり、豊富なアーカイブ素材を活かした巧みな投稿が印象的です。
ファンからのコメントには温かい声が多く寄せられる一方で、皇室関連アカウントとしては珍しく、時には辛口な意見も届くことがあります。それでもブロックや削除といった対応はせず、すべてを受け止めるように堂々と運用を続けている姿勢には、信頼と品格を感じさせる強さがあります。
>>参考: イギリス皇室 X(旧Twitter)公式アカウント2018年11月14日投稿
チャールズ皇太子70歳誕生日より

>>参考: イギリス皇室 X(旧Twitter)公式アカウント2018年5月21日投稿
:2018年5月ロイヤルウェディングより

まとめ:「個人」をメインとする公式アカウント運用のヒント
今回は、世界の政治家や要人のSNS公式アカウントの運用状況について確認いたしました。彼らが意図的に選んでいるかは不明ですが、ターゲットとなるユーザーが利用しているSNSを選び、その特性に応じて使い分けていることがわかりました。
拡散を目的とする場合にはX(旧Twitter)を、ブログのようにコンテンツを運用するためにはFacebookを利用するなど、目的に応じた使い分けがされています。
世界的に普及しているSNS(プラットフォーム)を活用
ターゲットとなる国やユーザーが利用しているSNSに公式アカウントを開設しています。
過剰に媚びることはない。
一般ユーザーからのリプライ(コメント)に必ずしも返信しない点が特徴です。
ファンからの好意的なコメントにも返信を控え、感情を煽ることなく、あくまで情報発信に専念している様子が見受けられます。また、厳しいコメントに対しても、ブロックやミュートをせず、表示したままにすることで小細工をしない姿勢を見せています。頻繁な投稿を通じてコミュニケーションを取ることに特化しています。
タイミングをみて柔らかい内容の投稿をする。
政治家や要人のSNSアカウントは一般的に硬い内容が多くなりますが、時折庶民的な内容を投稿することでカジュアル感を演出し、親近感を与えています。投稿内容の強弱のつけ方は参考になるポイントです。
本来であればSNS上でコミュニケーションを取り、ファンとの関係強化を図るSNS運用を勧めますが、要人などの「個人」が中心となるアカウントでは、情報発信を頻繁に行うことやファンが求める情報を発信することが、すでに交流が始まっていることが明らかとなりました。
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